任意聴取でも、弁護士が取調室に同席することは法律上の権利ではなく、実際にもほとんど認められていません。ただし、出頭前の相談、警察署までの付き添い、休憩中の助言、捜査機関への申入れなど、弁護士ができることは多くあります。逮捕・勾留されていなければ、取調べの途中で退去して弁護士に相談することもできます。呼出しを受けたら、出頭前に弁護士に相談し、どこまで関わってもらうかを決めておきましょう。
この記事で分かること
- 任意聴取に弁護士が同席できるかどうかの現状
- 同席できない場合に弁護士ができること
- 被疑者と参考人の違いと、取調べで使える権利
- 相談だけか、付き添いまで頼むかの考え方
任意聴取とは|被疑者と参考人の違い
任意聴取とは、逮捕されていない人が、警察や検察の求めに応じて出頭し、事情を聞かれることです。刑事訴訟法に基づく取調べの一つで、「任意の取調べ」とも呼ばれます。
呼ばれる人の立場は、被疑者(犯罪の疑いをかけられている人)と、参考人(被害者や目撃者など、被疑者以外の人)に分かれます。立場によって、法律上の扱いが少し異なります。
| 項目 | 被疑者 | 参考人 |
|---|---|---|
| 出頭の拒否・途中の退去 | できる(逮捕・勾留中を除く) | できる |
| 黙秘権の告知 | 取調べの前に告げられる | 法律上の定めはない |
| 供述調書の確認・署名押印の拒否 | できる | できる |
参考人も、出頭や供述を拒むことができます。ただし、捜査に欠かせない知識を持つことが明らかな人が拒むと、裁判官による証人尋問が請求される場合があります(刑事訴訟法226条)。また、参考人に黙秘権を告げる定めはありませんが、自分に不利益な供述を強要されないことは保障されています(憲法38条1項)。
参考人として呼ばれても、話の内容によっては被疑者として扱われることがあります。自分が疑われていると感じたら、どの立場で呼ばれているのかを確認し、弁護士に相談してください。
取調べに弁護士は同席できる?法律と実務の現状
現在の刑事訴訟法には、取調べに弁護人(被疑者の弁護をする弁護士)を立ち会わせる権利を定めた規定はありません。一方で、立会いを禁止する条文もありません。警察の規則には、弁護人などを立ち会わせた場合の手続も置かれています(犯罪捜査規範180条2項)。
しかし、立会いを認めるかどうかは、捜査機関の判断に委ねられているのが現状です。日本弁護士連合会によれば、捜査機関が立会いを認めることはほとんどありません。任意聴取でも、弁護士が立会いを申し入れることはできますが、断られる可能性が高いと考えておきましょう。
日本弁護士連合会は、立会いを権利として法律に定めるよう求めています。ただ、2026年9月時点で、そのための法改正は行われていません(日本弁護士連合会「弁護人の取調べへの立会い」)。
なお、逮捕・勾留されている人は、弁護士と立会人なしで面会(接見)できます(刑事訴訟法39条1項)。これは取調べへの同席とは別の制度です。詳しくは接見についての解説をご覧ください。
同席できなくても弁護士ができること
取調室に入れなくても、弁護士は取調べの前、途中の休憩、終了後に本人を支えることができます。
- 出頭前の相談
呼出しの内容から、被疑者か参考人か、どのような事件かを確認し、見通しを説明します。どこまで話すか、黙秘するかといった方針は、助言を受けたうえで本人が決めます。
- 警察署までの付き添いと待機
弁護士が警察署まで同行し、取調べの間は近くで待機します。待機できる場所は、警察署の対応によって異なります。終了後すぐに、聞かれたことと答えたことを一緒に振り返れます。
- 休憩中の助言
答え方に迷ったときは、休憩を求めて弁護士に相談できます。逮捕・勾留されていなければ、出頭後いつでも退去できるため、相談のために取調べを中断することも可能です。
- 捜査機関への申入れ
弁護人として選任を届け出たうえで、立会いの許可や休憩の確保、威圧的な取調べの中止などを書面で求めることがあります。警察の規則でも、やむを得ない理由がある場合を除き、深夜や長時間の取調べは避けるべきとされています(犯罪捜査規範168条3項)。申入れに応じるかどうかは、捜査機関の判断です。
- 供述調書の確認方法の助言
供述調書(話した内容を捜査機関がまとめた書面)は、読み聞かせか閲覧で内容を確認でき、誤りがあれば訂正を求められます。納得できない場合は、署名押印を拒否できます。どこを確認すべきかを事前に助言します。
取調べで本人が使える権利
取調室では、本人が自分で権利を使います。出頭前に、次の点を弁護士と確認しておきましょう。
- 黙秘権:被疑者は、取調べの前に「自己の意思に反して供述をする必要がない」と告げられます。話さないことは権利ですが、事実と違う説明をすることとは異なります。
- 退去の自由:逮捕・勾留されていなければ、出頭を断ることも、途中で帰ることもできます。ただし、事情によっては逮捕に進む可能性もあるため、呼出しを放置せず、弁護士と相談して判断してください。
相談だけか、付き添いまで頼むか
弁護士への依頼には、相談だけにする方法と、付き添いや申入れまで任せる方法があります。例えば、次のように考えられます。
| 依頼の範囲 | 検討される場面の例 |
|---|---|
| 相談のみ | 参考人として、事実の確認を求められている |
| 付き添い・待機 | 被疑者として呼ばれ、答え方に不安がある |
| 弁護人の選任・申入れ | 疑いを否認している、前回の聴取が長時間だった |
付き添いを頼むなら、呼出しの日時が分かった時点で早めに相談してください。弁護士の予定が合わないときは、日程を調整できないか警察に相談することも考えられます。警察署への同行には、日当などの費用がかかる場合があります。当事務所の費用の目安は費用ページに掲載しています。
家族は弁護士探しを手伝えますが、取調べでどう話すかは、本人が弁護士と相談して決めることです。呼出しを受けたときの基本的な対応は、警察から呼び出しを受けたら|取調べ前に知りたいこともご覧ください。
よくある質問
Q1.弁護士に依頼すると、警察に悪い印象を持たれませんか?
被疑者は、いつでも弁護人を選任できます(刑事訴訟法30条1項)。依頼したこと自体を理由に、法律上不利に扱われる決まりはありません。気になる場合は、捜査機関には知らせず、相談だけで方針を整理する方法もあります。
Q2.任意聴取の段階でも、国選弁護人や当番弁護士を頼めますか?
被疑者の国選弁護人は、勾留を請求された後に請求できる制度です。逮捕されていない任意聴取の段階では利用できません(刑事訴訟法37条の2)。静岡県弁護士会の当番弁護士も、逮捕された人に弁護士が面会に行く制度です。任意聴取の段階では、自分で弁護士を探して相談・依頼することになります。
Q3.同席できない取調べの内容は、どう記録しておけばよいですか?
終わったらその日のうちに、聞かれたこと、答えたこと、時間や休憩の有無をメモしておくと、弁護士への相談に役立ちます。日本弁護士連合会は、任意の取調べを受けている人も想定した記録用の「被疑者ノート」を公開しています。なお、法律上の録音・録画の義務は、一定の重大事件などで逮捕・勾留されている被疑者の取調べが対象です(刑事訴訟法301条の2)。任意聴取は、この義務の対象外です。
まとめ
任意聴取でも、弁護士の取調室への同席は法律上の権利ではなく、実際にもほとんど認められていません。
それでも弁護士は、出頭前の相談、付き添いと待機、休憩中の助言、捜査機関への申入れで本人を支えられます。
逮捕・勾留されていなければ、途中で退去して弁護士に相談することもできます。
呼出しを受けたら、まず呼ばれた立場(被疑者か参考人か)と日時を確認し、出頭前に弁護士へ相談してください。
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