逮捕後の弁護士費用に全国一律の決まった金額はなく、事件の内容や手続の段階、依頼する事務所によって異なります。依頼する前に費用の内訳と見積りの説明を受け、委任契約書で着手金・報酬金・追加費用の条件を確認することが大切です。費用をすぐに用意できない場合でも、当番弁護士や国選弁護人などの制度を利用できる場合があります。逮捕後の手続は短期間で進むため、費用が心配でも早めに説明を求めてください。
この記事で分かること
- 逮捕後にかかる弁護士費用の種類(相談料・接見の費用・着手金・報酬金・実費)
- 費用の総額が変わる主な事情
- 見積りと委任契約書で確認すべき5つのポイント
- 費用を用意できないときに、段階ごとに使える公的な制度
逮捕後の弁護士費用の内訳
弁護士費用とは、弁護士に支払う報酬と、事件の処理に実際にかかる費用(実費)を合わせたものです。弁護士の報酬は各弁護士が基準を定めており、定価はありません(日本弁護士連合会「弁護士費用(報酬)とは」)。主な費用は次のとおりです。
| 費用の種類 | 内容 | 支払う時期の例 |
|---|---|---|
| 相談料 | 依頼前の法律相談の費用 | 相談時 |
| 接見の費用・日当 | 警察署へ出向き、本人と面会(接見)する費用 | 接見ごと、または着手金に含む |
| 着手金 | 依頼時に支払う費用。結果にかかわらず返還されないのが原則 | 依頼時 |
| 報酬金 | 結果(成功の度合い)に応じて支払う費用 | 事件の終了時 |
| 実費 | 交通費、記録のコピー代、郵送料など | 精算時など |
| 追加の費用 | 契約の範囲外の活動にかかる費用 | 契約による |
当事務所の費用の目安は費用ページに掲載しています。
費用の総額が変わる主な事情
弁護士の報酬は、事案の難しさや、かかる時間・労力などに照らして、適正・妥当なものでなければならないとされています(弁護士の報酬に関する規程2条)。そのため、同じ罪名でも費用が同じとは限らず、一律の「相場」では判断できません。例えば、次の事情で総額が変わることがあります。
- 勾留(逮捕に続く身体拘束)されるか、拘束がどのくらい続くか
- 接見の回数や、本人がいる警察署までの距離
- 示談交渉が必要か、被害者が何人いるか
- 事実を認めているか、争っているか
- 起訴されて裁判になるか、保釈を請求するか
依頼前に見積りと委任契約書で確認したい5つのポイント
弁護士は事件を受任するとき、報酬と費用について適切に説明しなければなりません。報酬に関する事項を含む委任契約書の作成も求められています(弁護士職務基本規程29条1項・30条1項)。依頼する側も、次の点を遠慮なく確認しましょう。
- 費用の内訳と見積り
着手金、報酬金、接見の費用、実費を分けて説明してもらいます。弁護士は、依頼しようとする人から申出があれば、報酬見積書の作成・交付に努めるとされています(弁護士の報酬に関する規程4条)。支払時期や分割払いの可否も確認しましょう。
- 着手金に含まれる活動の範囲
起訴前の活動だけか、起訴後の裁判まで含むかを確認します。示談交渉や接見の回数が含まれるかも確かめます。
- 追加費用が発生する条件
例えば、接見の回数が増えた場合、起訴された場合、保釈を請求する場合、別の事件で再逮捕された場合に、別の費用がかかるかを確認します。
- 報酬金が発生する条件
何をもって「成功」とするかを確認します。例えば、不起訴、釈放、保釈、執行猶予など、結果ごとの金額と、一部だけ達成した場合の扱いを確かめます。なお、弁護士が有利な結果を保証することは禁じられています(弁護士職務基本規程29条2項)。
- 途中で契約を終えた場合の扱い
委任契約書には、途中で解除できることと、中途で終了した場合の清算方法を記載することとされています(弁護士の報酬に関する規程5条4項)。支払済みの着手金がどう扱われるかを確認しましょう。
家族が費用を負担して依頼する場合でも、取調べでの話し方や示談をするかといった方針は、弁護士が本人と接見して意思を確認したうえで決めます。
費用を用意できないときに使える公的な制度
手続の段階に応じて、次の制度を利用できる場合があります。表の被疑者は起訴前、被告人は起訴後の本人を指します。
| 制度 | 利用できる段階 | 費用の扱い |
|---|---|---|
| 当番弁護士 | 逮捕された後(起訴前) | 1回の面会は無料。その後の依頼は原則有料 |
| 刑事被疑者弁護援助 | 逮捕後、勾留前 | 弁護士費用の援助を受けられる場合あり |
| 被疑者国選弁護 | 勾留を請求された後(起訴前) | 資力などの要件あり |
| 被告人国選弁護 | 起訴された後 | 資力などの要件あり |
逮捕後は、身体拘束の時から72時間以内に、検察官が勾留を請求するかを判断します。勾留が認められると、勾留請求の日から10日間(延長されると通算で最長20日間)、拘束が続く可能性があります。国選弁護人を請求できるのは勾留が請求された後なので、それまでは当番弁護士や援助制度の利用を検討します。
当番弁護士
弁護士が1回無料で、逮捕された人に面会する制度です。本人のほか家族も申し込めます。面会後、本人が希望すればその弁護士に弁護を依頼できますが、原則として有料です(静岡県弁護士会「当番弁護士」)。
刑事被疑者弁護援助
国選弁護を利用できない勾留前の段階で、資力が乏しい人の弁護士費用を援助する制度です。日本弁護士連合会が法テラスに委託して行い、申込みは弁護士を通じて行います。資力が回復した場合などには、援助された費用の負担を求められることがあります(日本弁護士連合会「法律援助事業のご案内」)。
国選弁護人(被疑者・被告人)
勾留状が出された被疑者や、起訴された被告人が、貧困などの理由で弁護人を選任できないときに、請求により裁判官・裁判所が選任する弁護人です。弁護人としての役割は、本人や家族が選んで契約する私選弁護人と変わりませんが、弁護士を自分で選ぶことはできません。
請求には資力申告書の提出が必要です。現金や預金などの合計額(資力)が基準額の50万円以上の場合は、先に弁護士会へ私選弁護人の選任を申し出る必要があります(法テラス「刑事事件」)。国選弁護人は、本人や家族から報酬などを受け取ってはならないとされています(弁護士職務基本規程49条1項)。ただし、有罪判決(刑の言渡し)を受けた場合は、国選弁護人の費用を含む訴訟費用の負担を命じられることがあります。貧困のため納付できないことが明らかな場合は除かれます。
よくある質問
Q1.示談金や保釈保証金も、弁護士費用に含まれますか?
含まれません。示談金は被害者に支払うお金で、金額は被害の内容や被害者の意向などによって異なります。示談は、被害者の意思を尊重し、弁護士を通じて進めるのが基本です。保釈保証金は、起訴後に保釈が許されたときに裁判所へ納めるお金です。逃亡や証拠隠滅などがなければ、裁判の結果にかかわらず、裁判が終わった後に返還されます。保釈の手続は早期釈放・保釈の解説をご覧ください。
Q2.弁護士に面会(接見)だけを頼むこともできますか?
当番弁護士なら、1回は無料で面会を頼めます。私選の弁護士に面会だけを依頼できるか、その費用はいくらかは、事務所によって異なります。正式に依頼した場合の面会費用の扱いも確認しましょう。接見の意味や家族の面会との違いは、接見についての解説をご覧ください。
Q3.国選弁護人から私選弁護人に切り替えることはできますか?
できます。私選弁護人が選任されると、国選弁護人を付ける必要がなくなったとして、国選弁護人を解任できるとされています(刑事訴訟法38条の3)。切り替え後の費用は、私選弁護人との委任契約によります。切り替えるかどうかは、本人の意思を確認して判断しましょう。
まとめ
逮捕後の弁護士費用に一律の金額はなく、事件の内容や手続の段階、事務所によって異なります。
依頼前に、費用の内訳と、追加費用や報酬金が発生する条件を委任契約書で確認しましょう。
費用を用意できない場合は、当番弁護士や国選弁護、援助制度を利用できる場合があります。
まずは本人のいる警察署と容疑を確認し、弁護士に費用と方針の説明を求めてください。
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