不起訴を目指す弁護活動とは?認める事件・争う事件で弁護士ができること

不起訴(検察官が裁判にかけないと決める処分)を目指す弁護活動は、事実を認めるか争うかで大きく変わります。認めている事件では示談や再発防止の取組みを、争っている事件では犯罪を裏付ける証拠が足りないことを、検察官に伝えます。どちらも処分が決まる前にしかできないため、逮捕・勾留(逮捕に続く身体拘束)されている場合は特に早めの依頼が大切です。ただし、どの活動も不起訴を保証するものではありません。

目次

この記事で分かること

  • 不起訴の主な種類と、弁護活動で目指す処分
  • 事実を認めている場合に弁護士が行う活動
  • 事実を争っている場合に弁護士が行う活動
  • 身柄事件と在宅事件で異なる、処分までの期間と進め方

不起訴とは|弁護活動で目指す主な3つの種類

不起訴とは、検察官が事件を起訴しない(裁判にかけない)と決める処分で、裁判所が言い渡す無罪判決とは異なります。不起訴になれば刑事裁判は開かれず、前科(有罪判決を受けた経歴)もつきません。弁護活動で主に目指す不起訴の種類は、次の3つです。

種類 内容 主に目指す場面
嫌疑なし 本人が行為者でないことや、証拠がないことが明らか 事実を争う場合
嫌疑不十分 犯罪の成立を認める証拠が足りない 事実を争う場合
起訴猶予 疑いは明らかだが、事情を考えて起訴を見送る 事実を認める場合

起訴猶予の判断では、本人の性格・年齢・境遇、罪の重さや事件の事情、事件後の状況が考慮されます。

根拠:刑事訴訟法248条、法務省「事件事務規程」75条、検察庁「刑事事件の手続について」

前科と前歴(捜査の対象になった経歴)の違いは、不起訴処分に向けての対応で解説しています。

依頼後の最初の対応|事実の聞き取りと方針の相談

弁護士は依頼を受けると、本人から事実関係を詳しく聞き取ります。勾留中なら警察署などで接見(弁護士が本人と面会すること)し、在宅なら事務所などで面談します。そのうえで見通しを説明し、事実を認めるか争うかを本人と相談します。取調べへの対応も、この段階から助言します。

方針を決めるのは本人です。費用を負担した家族でも、代わりに決めることはできません。

事実を認めている場合の弁護活動|起訴猶予を目指す

  1. 被害者への謝罪と示談の申入れ

    弁護士が被害者に連絡し、謝罪の意思を伝えて、被害弁償や示談(話合いによる解決の合意)を申し入れます。応じるかどうかは被害者が決めることで、無理な働きかけはしません。

  2. 再発防止の環境づくり

    例えば、医療機関や相談機関の利用、家族による見守りなど、繰り返さないための取組みを本人・家族と考えます。

  3. 検察官への意見書の提出

    示談書、本人の反省文、家族の身元引受書(本人の監督を約束する書面)などを添えて、起訴猶予が相当である理由を書面で伝えます。

器物損壊罪などの親告罪は、被害者などの告訴(処罰を求める申告)がなければ起訴できない罪です。起訴前に告訴が取り消されれば、起訴されません(刑事訴訟法237条、刑法264条)。一方、示談が成立しても、それだけで不起訴になるとは限りません。事件の内容や前科の有無なども含めて、検察官が判断します。示談の進め方は刑事事件の示談交渉の解説をご覧ください。

事実を争っている場合の弁護活動|嫌疑不十分などを目指す

身に覚えがない、事実の一部が違うなど、疑いの内容を争う場合の主な活動は次のとおりです。

  1. 取調べへの対応の助言

    被疑者(疑いをかけられている人)には黙秘権(言いたくないことを言わなくてよい権利)があります。供述調書(話した内容をまとめた書面)は、訂正を求めたり、署名押印を断ったりできます。何を話し、何を黙秘するかを弁護士と相談して決めます。

  2. 本人に有利な証拠の確保

    アリバイを示す記録、メッセージの履歴、防犯カメラの映像など、本人の説明を裏付ける資料を集めます。失われるおそれがある証拠は、裁判官に押収や証人尋問などを請求して保全する制度もあります。

  3. 検察官への意見書の提出

    起訴前は、捜査機関が集めた証拠を弁護士が閲覧できる権利は定められていません。取調べで聞かれた内容などから検察官の見方を検討し、証拠が不十分である理由を書面で伝えます。

根拠:刑事訴訟法40条・179条・198条

黙秘は権利ですが、うその説明とは違います。事実と異なる説明は、かえって不利になるおそれがあります。争っている段階で示談を申し入れると、事実を認めたと受け取られるおそれもあるため、弁護士と慎重に検討してください。

身柄事件と在宅事件で異なる処分までの期間と進め方

逮捕・勾留されて捜査が進む身柄事件と、逮捕・勾留されずに進む在宅事件では、処分までの期間が異なります。

項目 身柄事件 在宅事件
処分までの期間 勾留請求の日から10日以内に起訴しないときは釈放。延長は通算10日まで 公訴時効(起訴できる期間)のほか、法律上の期限はない
起訴前の国選弁護人 勾留請求後に利用できる(資力などの要件あり) 利用できない

根拠:刑事訴訟法37条の2・208条・250条

身柄事件では、勾留の期限までに処分が決まることが多くあります。一方、処分が決まらないまま釈放され(処分保留)、在宅で捜査が続く場合もあります。釈放は不起訴と同じではありません。別の事件で再逮捕され、拘束が続くこともあります。

在宅事件では、処分まで数か月以上かかる場合があり、時期が事前に分からないこともあります。弁護士は担当の検察官に示談の状況などを伝え、処分の前に意見を述べる機会を求めることがあります。流れの詳細は在宅事件の解説をご覧ください。

どちらの場合も、起訴された後に不起訴へ戻すことは原則としてできません。検察官から略式手続(書面の審理で100万円以下の罰金などを科す手続)への同意を求められることもあります(刑事訴訟法461条の2)。略式命令も有罪で前科になるため、同意する前に弁護士に相談してください。

本人と家族が協力できること

  1. 本人:取調べの内容を記録する

    聞かれたことと答えたことを、終わった後にメモして弁護士に伝えると、方針の見直しに役立ちます。

  2. 本人:証拠を消さない、関係者に直接連絡しない

    メッセージや写真などを削除・変更したり、被害者や関係者に連絡したりすると、証拠を隠そうとしたと疑われるおそれがあります。

  3. 家族:再発防止と監督に協力する

    同居や生活の見守り、通院の付き添いなど、協力できることを弁護士に伝えてください。

よくある質問

Q1.勾留中に国選弁護人が付いた後、釈放されたらどうなりますか?

処分が決まる前に釈放されると、原則として国選弁護人の選任は効力を失います(刑事訴訟法38条の2)。釈放後も示談や意見書の準備を続ける必要がある場合は、私選弁護人への依頼を検討することになります。

Q2.弁護士に話した内容は、検察官に伝わりますか?

弁護士には、職務上知り得た秘密を守る義務があります(弁護士法23条)。意見書にどの事情を書き、どの資料を出すかは、本人と相談して決めます。不利に思える事情も正確に話すほうが、見通しを立てやすくなります。

Q3.被害者がいない事件でも、不起訴を目指せますか?

示談はできませんが、起訴猶予の判断では、本人の境遇や事件後の状況も考慮されます(刑事訴訟法248条)。例えば、再発防止のための通院や相談、家族による監督の約束を資料にまとめ、検察官に伝えることがあります。ただし、見通しは事件の内容や前科の有無などによって大きく異なります。

まとめ

不起訴を目指す弁護活動は、事実を認めるか争うかで内容が変わります。
認める場合は示談や再発防止の取組みを、争う場合は証拠が足りないことを、意見書などで検察官に伝えます。
身柄事件では勾留の期限までの短い期間に、在宅事件では処分の時期を確認しながら準備を進めます。
まずは勾留中か在宅かを確認し、処分が決まる前に弁護士へ相談してください。
ご相談はお問い合わせページから受け付けています。

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