刑事事件で示談を拒否されたら|断られた後にできる対応と注意点

被害者に示談を拒否されても、本人や家族が直接連絡したり、説得を重ねたりしてはいけません。示談に応じるかどうかは、被害者が自由に決められるからです。まずは弁護士を通じて断られた理由を確認し、被害弁償だけの申出など、被害者の意思に沿った対応を検討しましょう。示談が成立しなくても、不起訴になる場合も、起訴される場合もあります。

目次

この記事で分かること

  • 被害者に示談を断る自由があることと、断られた後にしてはいけないこと
  • 断られた後に弁護士・本人・家族ができること
  • 供託・贖罪寄付の仕組みと、示談との違い
  • 示談が成立しない場合の処分・裁判への影響

示談に応じるかどうかは被害者が決める

示談とは、被害者と話し合い、謝罪や被害弁償などを通じて当事者間で解決を図ることです。示談の基本や弁護士が間に入る意味は、刑事事件の示談交渉の解説をご覧ください。

示談は、被害者との合意(契約)です。契約をするかどうかは、それぞれが自由に決められます(民法521条1項)。被害者には示談を断る自由があり、応じる義務はありません。

断られる理由はさまざまです。例えば、被害のショックが大きく、まだ話し合える状態にない場合があります。本人側と関わりたくない、金額や条件が合わない、事実関係に納得できないといった理由もあります。会社や店舗が被害者の場合、方針として示談に応じないこともあります。

断られた後にしてはいけないこと

対応を誤ると、被害者をさらに傷つけ、本人の立場も悪くするおそれがあります。本人や家族だけでなく、周囲の人も次の行動は避けてください。

  • 被害者に直接連絡したり、自宅や職場を訪ねたりする
  • 被害者が望んでいないのに、弁護士を通じて申入れを繰り返す
  • 被害届の取下げや、供述(捜査機関への説明)の変更を求める
  • 知人などに頼んで、被害者に示談を働きかけてもらう

正当な理由なく面会を強く求めたり、威圧的に交渉したりすると、証人等威迫罪に当たるおそれがあります。被害者への働きかけは証拠隠滅のおそれがあるとみられ、身体拘束を続けるかどうかの判断(勾留や保釈)で不利になる場合もあります。

根拠:刑法105条の2

断られた後に検討できること

どの対応が適切かは、断られた理由や被害者の意向によって異なります。被害者が連絡先を伝えることも望まない場合は、再発防止や贖罪寄付など、被害者に連絡しない方法を中心に検討します。

弁護士を通じて行うこと

  1. 断られた理由と、再度の連絡の可否を確認する

    被害者が話せる範囲で理由を聞き、時間を置いて改めて連絡してよいかを確認します。連絡を望まないと示されたら、その意思に従います。

  2. 謝罪文だけを受け取ってもらえるか打診する

    受け取ってもらえる場合に限り、本人が書いた謝罪文を、弁護士が内容を確かめてから届けます。

  3. 許しを求めず、被害弁償だけを申し出る

    示談書への署名や、許しの意思(宥恕)の表明を求めずに、損害の弁償だけを受け取ってもらう方法です。受け取ってもらえたら、受領書を残します。

  4. 申入れの経緯を検察官や裁判所に伝える

    申入れの時期や内容、断られた経緯、弁償金の準備状況などを記録し、必要に応じて意見書などで検察官や裁判所に伝えます。

本人と家族が進めること

  1. 謝罪文を書き、弁償金を用意しておく

    本人は、弁護士と相談しながら謝罪文を書きます。被害者の気持ちが変わったときに対応できるよう、弁償に充てるお金も用意しておきましょう。

  2. 再発防止に取り組む

    生活の見直しや、必要に応じた医療機関・相談機関の利用など、具体的に取り組みます。家族は、本人を見守り、支える体制を整えられます。

家族が費用を援助する場合も、示談を申し入れるかどうかは本人の意思を確認して決めます。被害者との連絡は、弁護士に任せてください。

供託・贖罪寄付と示談の違い

被害弁償の受取りも断られた場合には、供託や贖罪寄付が検討されることがあります。ただし、どちらも示談と同じ効果を持つものではありません。

方法 内容 示談との違い
被害弁償のみ 弁償金を受け取ってもらう 許しの意思は含まれない
供託 受取りを拒まれた弁償金を法務局に預ける 被害者の合意や許しはない
贖罪寄付 反省を示すため弁護士会などに寄付する 被害者の損害は回復しない

供託(弁済供託)

供託とは、弁償金を提供したのに被害者が受取りを拒んだ場合などに、法務局(供託所)にお金を預ける制度です。要件を満たせば、供託した時に弁償の債務は消滅し、被害者は法務局から供託金を受け取れます。

ただし、法務局の案内では、損害賠償の全額に遅延損害金(支払の遅れによる損害金)を加えて提供していることなどが必要です。被害者の住所や氏名が分からない場合は利用が難しいことがあり、供託をすると被害者に通知されます。刑事手続では弁償に努めた事情として伝えることはできますが、被害者の許しを示すものではありません。被害者の心情への影響も含め、弁護士と慎重に検討してください。

根拠:民法494条・495条

贖罪寄付

贖罪寄付(しょくざいきふ)とは、被害者のいない事件や、被害者と示談ができない事件などで、反省の気持ちを表すために行う寄付です。日本弁護士連合会や各地の弁護士会が受け付けており、依頼している弁護士を通じて申し込みます。静岡県弁護士会も、受付先の一つです。

寄付をすると証明書が発行され、情状(処分や刑を決める際に考慮される事情)の資料として提出されることがあります。ただし、寄付金は法律援助などの公益的な事業に使われ、被害者に渡るものではありません(日本弁護士連合会「贖罪寄付は弁護士会へ」)。

示談が成立しない場合の処分・裁判への影響

示談の有無は、処分を判断する事情の一つです。検察官は、犯罪の軽重や情状、犯罪後の情況などから、起訴する必要がないと考えるときは、起訴しないこと(起訴猶予)ができます。示談がなくても、被害弁償の申出や反省・再発防止の状況などが考慮され、起訴猶予となる場合もあります。一方で、事件の内容によっては起訴される場合もあります。

根拠:刑事訴訟法248条

なお、器物損壊などの親告罪は、告訴(処罰を求める申告)がなければ起訴できない罪です。この場合、告訴が取り消されない限り、起訴される可能性が残ります。起訴された後の裁判でも、被害者への弁償や本人の反省などは、刑を決める際に考慮される事情です(裁判所「刑事事件Q&A」)。不起訴に向けた活動全体は、不起訴処分に向けての対応で紹介しています。

よくある質問

Q1.時間がたてば、示談に応じてもらえることはありますか?

時間がたって、話を聞いてもらえるようになる場合もあります。ただし、改めて連絡するのは、被害者の了解が得られた範囲に限られます。また、逮捕・勾留されている事件では、勾留期間の満了までに、起訴するか釈放するかが判断されます。勾留期間は、勾留請求の日から原則10日、延長されると最長20日です(刑事訴訟法208条)。待つだけでなく、その間にできる対応を弁護士と進めましょう。

Q2.職場や近所で被害者と顔を合わせる場合、直接謝ってもよいですか?

示談を断られている場合は、本人から事件の話をしたり、謝罪を申し出たりすることは避けてください。謝罪のつもりでも、被害者には圧力と受け取られるおそれがあります。顔を合わせる機会を減らす工夫も含めて、弁護士に相談しましょう。

Q3.示談が成立しないと、民事で損害賠償を請求されることはありますか?

あります。被害者は、刑事手続とは別に、民事裁判などで損害賠償を請求できます(民法709条)。被害弁償だけの場合も、「これ以外に請求しない」という清算条項がなければ、追加で請求される可能性があります。

まとめ

被害者には示談を断る自由があり、直接の連絡や説得を重ねることはできません。
断られた後は、弁護士を通じて理由と意向を確認し、被害弁償だけの申出など、被害者の意思に沿った対応を検討します。
供託や贖罪寄付は、示談と同じ効果を持つものではありません。
まずは断られた経緯を弁護士に伝え、今後の対応を相談してください。
ご相談はお問い合わせページから受け付けています。

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